トップページ > 「前世知る少年」平田篤胤『勝五郎再生記聞』を読む

前世知る少年 秋田魁新報連載 平田篤胤『勝五郎再生記聞』を読む

第十回 神仏や亡き縁者の姿 死者に寄り添い導く

前世知る少年 勝五郎

簗瀬均氏、秋田魁新報社の許可を得て掲載しています。大きな画像はこちら


平田篤胤著『再生記聞』にある藤蔵のように、死んでから神仏のような存在に導かれて生まれ変わったという事例は現在でも少なくない。

米バージニア大学医学部知覚研究所客員教授の大門正幸博士はインド人としての記憶を持つ西日本在住の少女(2005年6月生まれ)を、2010年7月10、11日に面談して調査した。大門博士は、比較的明確な「過去生(前の人生)」の記憶を持つ少女から直接話を聞き取った。母親から聞き取った内容については、少女が同意したもののみ記録した。

少女はインドの自宅で焼死した「過去生」を持つ。亡くなった時に、上空から見た火災後の家と嘆き悲しむ家族の様子を語った。

この事例で特筆すべきは、日本に生まれ変わったという少女の額に母斑(ぼはん…ほくろやあざ)があったことだ。少女は「過去生」でヒンズー教徒であり、額に赤いビンディを付けていたという。ビンディとは、ヒンズー教徒女性が硫化水銀の赤い小さな丸を額に描いたもの。

少女は3歳の時、日本の母の意向でレーザーによる除去治療を受けた。3歳10カ月のころ、母斑について「インドにいる時からず~と嫌だったんだよね」と語っている。

5歳になると、日本人として生まれる前、少女を守る女神様からいろいろな助言を受けたという発言をし始めた。額の母斑については「インドのことを忘れないように女神様が付けた」と話した。

また少女は、生まれる前に天国のようなところで出会った、額にビンディがある神様の絵を描いている。少女によるとビンディの色も神様によって決まっているという。(『人体科学』第21巻第1号大門正幸 2012年5月)

チベット仏教の『死者の書』は、第一次世界大戦中に英国の人類学者エヴァンス・ヴェンツが発見し、英訳してオックスフォード大学から出版された。死が全ての終わりと考える当時の科学観に疑問を感じていた心理学者ユングは、同書を読んで「魂の秘密を解き明かす生涯の伴侶に出会った」と述べた。

『死者の書』には死んでから49日間、その人の魂(意識)がとどまる世界が描かれている。サンスクリット語で「アンタラー・ババantara₋bhava」、日本語には中陰(中有…ちゅうう)と訳され、生前の意識の持ち方によって神仏がさまざまな姿になって現れるという。また魂が肉体から離れて宙に浮く感覚も覚えるという。これらは生まれ変わった記憶を持つ子供や臨死体験者が語る証言と共通している。

現れる神仏は、その国や地域、家族あるいは本人の信仰と関係深い像となり、魂を導く事例が多い。

だが信仰と関係なく、前に亡くなった肉親などの縁者が現れる場合も少なくない。臨死体験後に、死後の記憶を語る子供の言葉にも、死者に寄り添う不思議な存在があった

米フィラデルフィアに住むジャクソン・バワーズ君(4)は、インフルエンザをこじらせ肺に穴が開き、生後1ヵ月で昏睡状態に陥った。4ヵ月後奇跡的に助かったが、2歳になったころから突然病院での体験を話し始めた。両親は彼に入院したことを伝えていなかった。

ジャクソン君は手術中に魂が身体から抜け出し、医師や母親の姿を見ていたという。病室で母親が座っていた位置や、救急車に乗ったり父親が付き添ったりした時の詰もした。そうした内容はすべて事実と一致していた。

「僕は死んだよ」「神様の所に行ったんだよ」「奇麗だったよ」などとも語った。さらに驚くべきは、病室でクリーミーという女性がずっと付き添っていたと語ったことだ。

クリーミーとは、ジャクソン君が生まれる10年前に死亡し、存在すら知るはずがない祖母の名前だった。両親が驚いて祖母の写真をジャクソン君に見せると、「この人だ」と答えた。両親は祖母のことをジャクソン君に一度も話したことがなかった。(NHK・BS1 「立花隆 臨死体験 死ぬとき心はどうなるのか」、2015年3月25日放送)

私事だが、昭和4(1929)年、叔母は天然痘にかかり死線をさまよった。その時、大正14(1925)年に死去していた曽祖父が叔母の枕元に白装束で現れ、じつと見守っていたという。翌朝、叔母は奇跡的に回復した。この不思議な体験を、叔母は生涯繰り返し語っていた。

 

このページの先頭へ