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前世知る少年 秋田魁新報連載 平田篤胤『勝五郎再生記聞』を読む

第七回 死後に抜け出た魂 肉体とは別に存在か

前世知る少年 勝五郎

簗瀬均氏、秋田魁新報社の許可を得て掲載しています。大きな画像はこちら


勝五郎は、前世で亡くなる時の様子や、棺桶(かんおけ)に入れられ肉体から抜け出る体験を鮮明に記憶していた。肉体が機能しなくなった少年に、死後の記憶が残っていることは、「魂(意識)の存在」につながるのだろうか。

息が絶えたときは、何の苦しみもなかったが、その後しばらく苦しい思いをした。それが過ぎると苦しいことはまったくなかった。自分の体が棺桶の中に強く押し込められたとき、棺桶から飛び出して人々のそばに来ていた。

米バージニア大学が集めた膨大な事例には、勝五郎のように、死後の体験を語る内容が多い。現代のわが国においても、亡くなった後の記憶を持つ少年がいる。

バージニア大学客員教授の大門正幸博士は、英スコットランドにおける「過去生の記憶」を持つ関西在住のTomo君という少年(2000年1月生まれ)を、2010年6月と7月にわたって調査した。

Tomo君は5歳の時、「1997年10月24日から25日の間に(スコットランドで)死んだ」と発言した。

その後、日本の母が「どうしてTomo君、死んだって分かったん?」と質問すると、Tomo君は「イギリスのお母さんが困った顔をしてた。(Tomo君が亡くなったので6人家族から)5人になってしまったわねぇとか言ってた」と答えた。

母が続けて尋ねた。「えっ? Tomo君、見えたん?」。Tomo君が答えた。「うん、Tomo君を土に埋めてしまった」。母が聞いた。「それからTomo君、どうしたん?」。するとTomo君は「滑り台みたいな25階のエレベーターに乗ってるみたいな感じの事してた」と答えた。(『人体科学』第20巻第1号 大門正幸博士 2011年6月)

「25階のエレベーターに乗ってるみたいな感じ」とは、魂が身体から抜け出て、浮遊している様子を表しているのだろうか。

いずれにせよ勝五郎の過去生とされる藤蔵もTomo君も亡くなって脳が機能しなくなった後の「死後の様子」を鮮明に記憶している。

魂が脳の働きによってのみ機能すると考えるなら、こうした事例は説明しにくいだろう。脳が機能しないときの魂は、どこにあるのだろうか。

バージニア大学数授だった故イアン・スティーブンソン博士は、魂が脳などの肉体とは別の場所に存在すると考えた。そして魂を入れる器を「心搬体(psychophore)」と名付けた。

ノーベル賞受賞者も輩出している米アリゾナ大学の心理学科教授ゲイリー・シュワルツ博士は、魂が物理的に実在するかどうかを、光子(光の粒子)を検出する機械で実験した。

ミディアム(霊媒者)によって霊を招いた場合と、招かない場合の光子の量を比べて測定した。すると霊を招くと、光子の量が増加した。これによって魂が、光子と関係していることを結論づけた。(参考『人体科学』第23巻 大門正幸博士 2014年)

魂の物理的な計測においては、1907年に米国マサチューセッツ州の医師ダンカン・マクドゥールガル博士(1866~1920年)が発表した、死後に体重が減少したという論文がある。

この実験結果については、批判が少なくない。だが大門博士によると、多くがマクドゥーガル博士の原著を読んでいない人たちだった。博士の論文を綿密に検討したある研究によれば、博士の研究結果は現在の水準から見ても十分厳密で科学的であるという。

さて『再生記聞』は、この後、肉体を抜け出た少年の魂が、自分の棺(ひつぎ)の上に乗って山の墓地へ向かう。

山へ葬りに行った時は、白く覆われた龕(がん…ひつぎ)の上に乗っていた。 棺桶を穴へ落として入れる時に、大きな音がして驚いた。今もよく覚えている。

池田冠山著『前生話』にも「葬るため穴を掘って壷を落とした時、どんという音がした。よく覚えている」とある。土の中に棺桶を埋めた時の大きな音が、少年の魂に鮮烈に響き記憶されたようだ。魂は音に敏感なのだろうか。

 

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