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勝五郎と学者・文人たち

イアン・スティーブンソン

「生まれ変わり」現象の研究で名高い大学がアメリカにあります。イアン・スティーブンソン博士が開設した、バージニア大学医学部知覚研究室。50年にわたり、前世の記憶を持つ子どもの事例を世界40カ国以上で精査、2600を越えるデータを保有しています。

この名門大学と、勝五郎とは浅からぬ縁があるのをご存知でしょうか?バージニア大学ロタンダ

スティーブンソン博士が「生まれ変わり」の研究に専心するきっかけの一つとなったのが、江戸時代に残された勝五郎の記録です。それは小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)によって英訳され、博士の知るところとなり、1960年発表の論文「前世の記憶とされるものによる死後生存の証拠」("The Evidence for Survival from Claimed Memories of Former Incarnations")でも紹介されています。

この論文を読んだチェスター・カールソン(乾式複写法の発明者)の資金援助により、博士は研究に邁進できるようになりました。

1977年、『神経・精神病学誌』(Journal of Nervous and Mental Disease)でスティーブンソン博士の「生まれ変わり」研究の特集号が組まれ、多くの反響を呼び起こしました。その中で、精神医学界で信望のあるハロルド・リーフは博士のことを「きちょうめんで、綿密で、慎重な研究者」「途方もないあやまちを犯しているか…さもなければやがて20世紀のガリレオとしてその名を知られるようになるかであろう」と評しています。

その後もこの分野の研究は、『ランセット』(Lancet)、 『アメリカ医学協会誌』(JAMA: The Journal of the American Medical Association)、 『米国精神科学会誌』(American Journal of Psychiatry) 、『神経・精神病学誌』(Journal of Nervous and Mental Disease)など権威ある医学誌でも度々取り上げられていきます。

「生まれ変わり」現象の研究は、前世の記憶を持つという子どもや家族への聞き取りと、それに対応する前世の人物が実在し、どれだけ事実と一致するか確認する調査が基本となります。

キャビネット「生まれ変わり」事例として残されるためには、研究室が定めた条件を満たす必要があります。前世の記憶を持つ人物が、前世の人物の持ち物や親しい人を見分けられるか。前世の人物に特徴的な行動を示すか。前世の記憶を発言した事実が、一人以上の成人によって裏付けられたか等。6つの条件のうち2つ以上に当てはまらないと事例としては保管されません。作り話や記憶違い、超能力によって過去の出来事を知った可能性をも含めて、細心の注意がはらわれるといいます。

「生まれ変わり」現象の解釈として、スティーブン博士は次のような説を検討しました。

(1)作話説、(2)自己欺瞞説、(3)偶然説、(4)潜在意識説、(5)記憶錯誤説、(6)遺伝記憶説、(7)ESP 仮説(超感覚的知覚説)、(8)憑依説、(9)生まれ変わり説

「生まれ変わりという考え方は最後に受け入れるべき解釈なので、これに変わる説明がすべて棄却できた後に初めて採用すべきである」「事例報告をつぶさに読んだうえで、各自が自分なりの結論を得るべきであるから、私の解釈は重要でない」としています。

イアン・スティーブンソン博士は1918年カナダのモントリオールで生まれ、1939年カナダの名門マギル大学医学部を首席で卒業、生化学、心身医学研究を経て、精神医学の道を歩みます。

1957年、39歳の若さでバージニア大学精神科の主任教授となり、その3年後、先にあげた「生まれ変わり」研究の先駆的論文を発表します。

2002年研究所所長を引退後も精力的に調査・研究を続け、259の論文と15の著作、膨大な「生まれ変わり」事例のファイルを残し、2007年88歳で亡くなりました。

スティーブンソン博士から研究を引き継いだ精神科医ジム・タッカー博士は、収集された事例は「記憶や感情や体の外傷が来世に持ち越される場合があることを示している」と述べています。

タッカー博士は「意識の持続」という言葉を使いましたが、スティーブンソン博士は心搬体(psychophore)という用語を創出しています。これは死後にまで記憶を持ち越す媒体をさして使われる言葉で、"魂を運ぶもの"という意味を持つギリシャ語から考え出されました。

「生まれ変わり」が真実だとしたら、いったい何が死後も生存し続けるのでしょうか?「20世紀のガリレオ」として、誰もがスティーブンソン博士の名を知る日が近付いているのかもしれません。

 

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