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物語の解説

物語の特徴:記録された生まれ変わり物語

「勝五郎生まれ変わり物語」は、当時の一流の文人・学者によって記録されました。

文人大名として名高い池田冠山は、最も早く勝五郎の家を訪ねて話を聞きましたが、勝五郎ではなく祖母のつやが話したことを、話し言葉のまま書き留めた『勝五郎再生前生話』を著しています。

中野村領主の多門傳八郎(おかどでんはちろう)は、職務上の取調べを行なって、調書を上司に提出しています。調書なので、訊いたことを正確に書き取っているはずですが、勝五郎本人というよりは、父源蔵が語った内容と思われます。調書の写しは、すぐに関係者の手に渡って広まっていったようですが、原本の所在は不明で、『勝五郎再生記聞』に写されたもので内容を知ることが出来ます。幕府の役人が生まれ変わりの顛末を取り調べるというのは、めったにないことなのではないかと思われます。傳八郎自身も「わざわざ取り調べるほどの事かどうかわからないが、といってここまで騒ぎが大きくなるとそのままにもしておけない」という意味のことを記しています。

なお、多門の調書によると、藤蔵の義父半四郎は、勝五郎が程久保村を訪ねるよりも前に、中野村の源蔵宅を訪れているとあります。

一方で、平田篤胤の『勝五郎再生記聞』は、主に勝五郎本人から聞いたことを記録しています。しかし、篤胤が書いているように、勝五郎が語ったことをそのまま記したのではなく、たどたどしく語ったことを、伴信友や篤胤が、整理をしてまとめたものです。「再生記聞」では、産土神の存在が強調されているなど、三つの記録には、それぞれの立場の違いによる見解の相違はありますが、おおよその事実関係は矛盾していません。いずれも、勝五郎が生まれ変わりを語ってから、三~五か月後の同時期の聞き取り調査の記録です。

不思議な巡り合わせで、詳細な記録として保存されたことによって、勝五郎の生まれ変わり物語は、さらに数奇な運命をたどっていくことになります。

 

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